応用情報技術者試験(2009年秋)
わく☆すた,美月です。
前回2009年春期の分析,応用情報技術者試験(2009年春)の評判が結構良かったので,今回の2009年秋の応用情報技術者試験についての分析と感じたことを書いていきます。
2009年になって2回の応用情報技術者試験を見てきて,やっぱり改めて,ソフトウェア開発技術者試験から応用情報技術者試験になって,試験内容は大きく変わったと感じます。
応用情報技術者試験の位置づけは,昔の一種(第一種情報処理技術者試験)に近く,すべてのIT技術者が通る,レベル3の登竜門という感じです。
今回の試験は,春試験に比べると全体的に,若干難易度が上がったかな,と感じてます。
前回が初回ボーナスという位置づけだったと思いますので,今後も難易度は,今回ぐらいで落ち着くと考えられます。特に,マネジメント系,ストラテジ系に関しての出題は難化していて,「文章を読んだだけで解ける」問題は減っていると思います。
合格率は,前回より低く,でもソフトウェア開発技術者時代よりは高く,ってことで,20%前後かなぁ,と予想してます。
それでは,午前,午後の試験別に見ていきます。
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午前試験は,前回と同じ試験範囲でした。前回も今回も,テクノロジ系49問,マネジメント系11問,ストラテジ系20問で同じです。そして,このうちの30問を抽出して,高度午前1が出題されています。
過去問からの出題も多く,ざっと見た感じでは,半分ぐらいは過去問です。ただ,新傾向の問題が増えて,前回よりは過去問の割合が減ったように感じています。前半のテクノロジ系は,過去問の再出題が多く,後半のマネジメント系,ストラテジ系では新問が多い印象です。
3回前の平成20年春試験(他の高度区分も含む)の過去問からの再出題が結構ありました。前回もそうでしたが,3回前ぐらいの過去問が,新しすぎもせず古すぎもせず,再出題されやすいのかな,と感じます。
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午後試験は,12問中6問選択で,最初の問1,2はどちらか1問,問3~12からは5問選択,という形式でした。
出てきた分野は,以下のとおりです。
●問1,問2 (2問中1問選択)
問1 経営戦略 (ソフトウェアの受託開発会社における,工事進行基準適用)
問2 プログラミング (文字列照合処理)
●問3~問12 (10問中5問選択)
問3 経営戦略 (原価計算システムの再構築)
問4 システムアーキテクチャ (Webシステムの構成)
問5 ネットワーク (リモートアクセス)
問6 データベース (旅行業務用データベースの設計)
問7 組込みシステム開発 (ディジタルフォトフレーム)
問8 情報システム開発 (開発プロセスでのテスト)
問9 情報セキュリティ (公開鍵基盤を用いた社員認証システム)
問10 プロジェクトマネジメント (プロジェクトのリスクマネジメント)
問11 ITサービスマネジメント (ITサービスにおけるサービスサポート)
問12 システム監査 (内部統制の整備状況の評価)
まず,必須問題です。
問1は,経営戦略の分野で,工事進行基準の問題で,ある程度知識がないと解けない,難しめの問題でした。問2のアルゴリズムは,定番の文字列照合処理で,ソフトウェア開発技術者のアルゴリズム問題に比べると,かなり易しい問題でした。
難易度としては,問2の方がかなり易しいと思います。前回に引き続き今回も,「アルゴリズムが苦手だから問1」というのはやって欲しくない,という試験センターの意図を感じます。
問1は,前回よりさらに難化した感じで,工事進行基準に関する知識はもちろんのこと,会計やEVMの知識が求められます。また問題文を熟読して,適切な答えを導いていく必要がある問題でした。
逆に問2は,過去の一種(平成11年)に出題されたのと同じテーマである,文字列照合処理の問題でした。ソフトウェア開発技術者時代には,定番のアルゴリズムをわかっているのを前提で,「見たこともないアルゴリズム」が出てくることが多かったのですが,応用情報技術者試験になってからは,2回とも,「定番のアルゴリズム」の出題です。明らかに,アルゴリズムに関しては難易度が下がっているように感じます。
選択問題は,テクノロジ系(問4,問5,問6,問8,問9)とそれ以外に分けて考えます。
テクノロジ系は,従来のソフトウェア開発技術者試験午後1とテーマが同じです。想定解答時間が15分から20分となり,データベース問題は短くなり,それ以外の分野は若干問題が濃くなっています。
今回の傾向としては,全体的に技術が新しくなっているような印象を受けます。問4でロードバランサ,問5でSSL-VPN,問9のICカードあたりは,最近よく使われる技術の出題でした。参考書ベースでの勉強だけしてると,手薄になりがちな分野が多かったと思います。
難易度的には,前回よりは若干難しく,従来のソフトウェア開発技術者とほぼ同程度だと考えられます。
それ以外の分野では,各分野の典型的な問題が出題されていました。
問3の原価計算では簿記などの会計知識が,問7の組込みシステムではイベントやタスクなどの扱い方がといった感じで,それぞれの分野の基礎知識が必要な問題になっています。問10のリスクマネジメントでは,プロジェクトマネジメントの考え方をきちんと理解しておかないと適切に解けませんし,問11ではITIL,問12では内部統制に関する理解が必要です。
難易度としては,前回の春試験より,かなり上がったと考えられます。
全体的には,どれを選んでも有利不利はないように,ある程度調整されている印象です。ですので,自分の好きな分野,将来進みたい分野を選んで学習するのが一番いいと思います。
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最後に,次回の試験に向けて。
新試験に変わってから2回実施されたので,大体試験の傾向も見えてきた感じです。といっても,まだ過渡期なので,まだ手探りの勉強が必要になる感じです。
参考書などは,今発売されているものより,今回の試験が開催された後に発売されるものの方がおすすめです。
午前分野の今後の学習としては,ソフトウェア開発技術者試験試験,応用情報技術者試験を合わせた過去問3期分+他区分のストラテジ系分野過去問をやるか,それらを厳選した午前問題集1冊をやるのがいいのかな,と思います。
午後試験では,あらかじめ「自分の進みたい方向性」を考えて,勉強する分野を絞り込むのがいいと思います。
テクノロジ系分野は,従来のソフトウェア開発技術者試験の過去問題を数多く解いたりして,広範囲の知識を身につけることがおすすめです。
その他の分野は,過去問があまりないので,対応する高度系の午後1問題を解いておくといいと思います。問7はエンべデッドシステムスペシャリスト,問10はITサービスマネージャ,問11はプロジェクトマネージャ,問12はシステム監査です。
問1,問3は対応する情報処理技術者試験が実はありません。中小企業診断士や簿記検定,少し対応するとしたらITストラテジストぐらいかと思います。この分野を選択するつもりなら,全然別系統の学習が必要です。
今復習するのは,印象が強く残るので,効率的です。次の高度試験にもつながります。
ただ,ずっと頑張り続けていると,伸びきったゴムのようになります。ですので,ひととおり復習して,今回の試験を完全消化したあとは,英気を養う意味でも,他のこともいろいろ楽しみましょう。